東山殿御香合 (ひがしやまどのおこうあわせ)
大枝流芳校 寛延元年(1748)2冊 正本
東山殿御香合(上)
おりから五月雨のころは・・・
香合といふ事・・・
香盆に香たたみ置やう(様)
香盆火とりすへ(据え)やう
六番香合 判衆議、判詞後日准后書之
一番
左 勝
「床の月」(とこのつき)
右
「山下水」(やましたみず)
二番
左 持
「雪の袖」(ゆきのそで)
右
「かはら屋」(かわらや)
三番
左 持
「しほ焼衣」(しおやきごろも)
右
「こりすま」(こりずま)
四番
左 持
「春光」(しゅんこう)
右
「浦ふち」(うらふじ:藤)
五番
左 勝
「玉水」(たまみず)
右
「萩の戸」(はぎのと)
注:「荻」と書き「はぎ」と読む本もある。
六番
左
「寝ぬ夜の夢」(ねぬよのゆめ)
右 勝
「山ふき」(やまぶき)
文明十一年五月十二日
於東山泉殿執行
東山殿御香合(下)
香畳 竪三寸七分 横二寸
一番 左
「梅花誰そでふれし匂ひぞと春やむかしの月にとはばや」といふ歌をもて、あしでに書けり。
右
「打はへてくるしき物は人めのみ忍ぶの浦のあまのたく縄」といふ歌をもて、あしでにかけり。
二番 左
源氏物がたりの夕がほの巻の詞書を裏のかたにかけるゆ、表にはひがきに夕がほのかかれる所を書けるなるべし。
右
「盧橘實低山雨重」という詩の一句を以て、あしでに書り。
三番 左
「蓮の葉の上はつれなきうらにこそものあらがひはつくといふなれ」という詩の一句を以て、あしでに書り。
右
「あしびきの山桜とを明け置て我まつ人をたれかとどむる」といふ歌をもて、あしでにかけり。
香畳折かた(折方)
ぎん(銀葉) 九分に一分のめん
ぎんはさみ(銀挿み)折かた
香箸
香箸はさみ折かた
香づつみ
香包折かた
常の御懐中の香づつみ
常の御懐中の香づつみ折かた
つねの御懐中の香づつみ
常の御懐中の香づつみ折かた
文明十一年五月十二日
於東山泉殿執行之
六種薫物合 文明十年十一月十六日
判衆議、詞書山賎後日書之
一番
左 勝
「なつころも」(なつごろも:夏衣)
右
「まつかせ」(まつかぜ:松風)
二番
左 持
「やまひと」(やまびと:仙人)
右
「きくの露」(きくのつゆ:菊の露)
三番
左
「漁りふね」(いざりぶね:漁舟)
右 勝
「榊葉」(さかきば)
香盆に香箱居(据え)様 [香合の形と製法の図]
「仙人」「夏衣」「漁舟」
「菊の露」「松かせ」「さかき葉」
薫物 [薫物調合法]
「夏衣」
「仙人」
「いさり舟」
「松かせ」
「菊の露」
「榊葉」
文明十年十一月十六日
東山泉殿執行之に於いて執行之
昨年の御たきもの合の事
おくりまいらせ候
東山殿御香合書跋
寛延元歳仲秋 大枝流芳記 印
−五月雨日記からの抜粋を校正したものと思われる。−