香道大意   

香道御家流宗匠 細谷松男述 委細不明

 

「香道大意」については、一部分のみが残されており全容が不明ですので、残された部分のみ極力読み易くしてご紹介します。

 

一 香は、供香(そなえこう)、空香(そらだきこう)、翫香(もてあそびこう)の三香を合わせて香道という。

二 供香は、天神地祇(てんじんちぎ)、祖先の霊を祭るために焚く香である。

三 空香は、「空焼き」の香であり、敬礼の式典、貴人の居所、招客の席に焚き置く。

四 翫香は、香合せ、一柱聞、焚組香等の翫事に焚く。

五 三香中、供香を以って上品、空香を以って中品、翫香を以って下品とする。

六 焚香は、供香をその源として、供香の餘裔(よえい)即ち空香となり、空香の餘裔即ち翫香となる。

七 香道は、焚き用いる「香木の聞き定め」から始まって、三香、草式、略式、組香、香元の手順、香会の規式(きしき)に至る造験(ぞうけん)究る(きわむる)を以ってその学とした。

八 香木聞き定めの術は、中古以来「五味傅」「木所」という事を設け、その下には組香を備えおいて研究することとした。

九 組香は、「香木の味」いわゆる木所五味を覚えさせるための筌蹄(せんてい)に後世つくり設けられたもので、香道中の一部に過ぎない。故に組香において「百炉百中」を利き得るといえども、余の儀式作法に鮮明ならざるものは、矜む(つつしむ)べきである。また、組香を以って香道の全体を心得てはならない。

十 組香は、その初学に使用する所のもので、十柱香、焚合を以って香道の秘事を教えはじめるところである。

十一 香に徳有り。若人が美香を焚けば、禍神(かしん)が退いて天の幸福を授かり得る。その故は、今を顕(あきらかに)に、人が良香を焚けば薫煙その傍らを不去し、身体を清浄にし、又、鼻に当てて聞けば、身体の内部に香煙が篭って身心ともに彌浄(びじょう)する。然るときは、多少の「黒心」を放たれ「赤心」となる。「赤心」となるは、煩(リッシンベン)の煩悩、火宅の慮(おもい)が離れて身体の内外ともに清浄となる事、聞香の徳という。人が香を焚けば災いを逃れて幸いを得るのみにあらず、香は、一切の不潔を除く功あれば、即ち今日謂うところの衛生上にも最も能あること、論を待たざるところである。

十二 香道は、概して供香、空香、の両儀より始めて香木の味を知り得る為に、種々の翫香、即ち組香を以って聞究(きききわむ)るに至る道の学とする。又、これにその道の書籍、参考となるべき香事の調度類に至るまでの物を恒に心がけで一覧の上、心得るべきものである。

 

 

三香系図

供香(そなえこう)  
空香(そらだきこう)
翫香(もてあそびこう) 一柱聞
香合
薫物合
組香

            

           ※ 以下、欠落?

          

                    

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