1月の組香

      

常磐の松に永遠や長寿の願いを込める組香です。

決められたとおりに香包を結び置いて聞くところが特徴です

慶賀の気持ちを込めて小記録の縁を朱色に染めています。

 

説明

  1. 香木は4種用意します。

  2. 要素名は、「一」「二」「三」と「別」です。

  3. 香名と木所は、景色のために書きましたので、季節や組香の趣旨に因んだものを自由に組んでください。

  4. 「一」を4包、「二」を5包、「三」を6包、「別」は3包作ります。(計1 8包)

  5. 「一」「二」「三」のうち各1包を試香として焚き出します。(計3包)

  6. 手元に残った「一(3包)」、「二(4包)」、「三(5包)」と「別(3包)」を指定されたとおりに結び置きします。

    ※ 「一・二・一」「一・二・三」「三・三・二」「二・三・三」「別・別・別」3×=15

  7. 本香は、3包×5組として15炉回ります。

  8. 香元は、組(3炉)ごとに「札筒(ふだづつ)」か「折居(おりすえ)」を添えて廻します。

  9. 連衆は、3炉を聞き定めて、その組の「聞の名目」が書かれた「香札(こうふだ)」を1枚投票します。(委細後述)

  10. 本香が焚き終わり、香元が香の出を宣言しましたら、執筆は正解となる「聞の名目」を定めます。

  11. 執筆は、当たりの聞の名目に「長点」を掛けます。

  12. 下附は、全問正解に「常磐(ときわ)」、その他は組の当たりごとに「○組」と書き付します。

  13. 勝負は、正解者のうち、上席の方の勝ちとなります。

 

皆様方には、輝かしい新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。

年末に「ジャンボ宝くじ」を購入しました。「一粒万倍日」の「12月8日」に「八戸市」で「128組」が手渡された「8並び(發發發)」は、ちょっと外れる気がしません。しかし、「一等、前後賞含めて10億円!」というのですから、これからの我が人生では到底使い切れない金額です。購入動機は至って不純で「当たったらこんな職場辞めてやる!」的な現状否定でした。この考えは55歳を過ぎて職責と処遇の「逆ざや現象」が耐えがたいものになってから度々襲ってくるのですが、退職後3年間の無給状態と学生のバイト代にも満たない年金生活が現実味を帯びてくると「早くこの問題に決着をつけたい」と迷走する自分の焦りのあらわれかもしれません。

我が職場には、1人が1年間で積み立てた3万円を30人分集め、「年末ジャンボ」1点に絞って投資する「確率研究会」なる集まりがあります。総額90万円の原資は会員が手分けして、各地の宝くじ売り場から「バラ」で購入し、集まった3千枚を抽選の日に全員で開封してチェックするのが「年末の恒例行事」となっているそうです。会の歴史は古く、設立後25年を経過しているため、各自の累積投資金額は既に75万円、平均回収率は2割強、当たりくじの最高金額は「組違い賞の10万円」とのことでした。今回の狙いは「前後賞無しの7億円×2枚」だそうで、みずほ銀行仙台支店から1人5千万円を現金で持ち出すのが「夢」だそうです。

「宝くじは夢を買う」とも言いますが、当選後の自分を真剣に「夢想」する方はどれほどいらっしゃるのでしょう。私は、まだまだ初心者なので、抽選日までは投資額分の「夢」を見てみることにしました。昔の一等賞金は「数千万単位」でしたので、お金の無い方には「一発逆転」のチャンスを与えましたが、我々中産階級は「家」でも買えば消化でき、人生やライフスタイルには影響するほどのインパクトはありませんでした。しかし、「10億円」となると「死蔵して利子で暮らす」にも余りあり、人生を換骨奪胎する可能性があります。よくよく考えても「マンション経営」ぐらいはしなければならないことになります。娘にも「10億円当たったら何する?」と聞いてみましたが、同意見。・・・思えば亡き母の夢もワンサイズ小さいですが「アパート経営」でした。そこで、真剣に不動産を購入するとどうなるか「夢想」してみました。10億円となると、15階建て2LDK×80戸のマンションが1棟建てられるそうです。家賃収入を8%位だとすると年間8千万円で月666万円の生活???どうみても管理会社を設立するか全面委託しなければ「大家さん」として自己管理するのは無理です。また、不動産となれば立地も大切ですので、その昔「龍穴庵」を結んだ時のように土地の性能まで考えて、「生まれ変わってもここに住みたい」と言えるものを吟味しなければなりません。これでは心身ともに疲れます。「悠々自適」のつもりでいた老後が、物件探しと税金対策の日々では、香人の生活からもほど遠くなります。まぁ、自虐的に言えば寿命が縮んで「ちょうどいい」でしょうか?

私は既に「自己拡大欲」を失っていますので、新しい家も大きな車も要りません。「エコでロハスなアートライフ」を楽しめれば満足なので、「やはり10億円は、扱えるキャリアを積んでいない人には重いな」と思いました。このコラムがアップされる頃には結果が出ているのでしょうが、「一粒万倍日」に購入した宝くじは、想念の種を万倍にも広げてくれたという意味でコストパフォーマンスが良かったかもしれません。皆さまのお宅にも「宝船」が漕ぎ着きますように…。

今月は、松の花に寄せて新春を寿ぐ「千年香(ちとせこう)」をご紹介いたしましょう。

「千年香」は、『軒のしのぶ(三)』に掲載のある「祝組」です。同名の組香は『御家流組香集(智)』にも掲載があり、その内容はほとんど同じで、客香の有無のみが異なります。また、平成19年9月に当サイトの掲載10周年を記念して「ノを取れば十年」とこじつけてご紹介した杉本文太郎著の『香道』に掲載のある「千年香」は、要素名が「松」「竹」「鶴」「千年山(ちとせやま)」の4種組で、非常に複雑な構造の上に焚き出された香の出によって証歌が変わるとても珍しい組香でした。今回は、『軒のしのぶ』を出典として、香記に新春の景色が溢れる「千年香」をご紹介いたしましょう。

まず、この組香に証歌はありません。『香道』に掲載のある「千年香」は、各要素に和歌が添えられていましたし、「千年山」の風景が主景であることが、証歌の取り扱いからも明白でしたので分かり易かったのですが、こちらの組香は少し難解でした。ただ、小記録全体を見回して、札紋や聞の名目を1つ1つ解釈していくと、どうもこの組香の主役は「松」ではないかと思えて来ました。「松の花は百年に一度咲いて、十回咲くのに千年かかる」と言います。そのため、長寿の象徴ともなっており、正月の寿ぎには欠かせないものです。この組香の「千年」は「千年松」を主景として、様々な松の一生を味わう趣向なのではないかと思います。

次に、この組香の要素名は、「一」「二」「三」と「別」と匿名化されています。すべての要素が匿名化されている理由は、後述する聞の名目の構成要素となるための素材として取り扱われているからです。第四の香が「ウ」や「客」ではなく「別の香」とされているところが珍しいかと思いますが、『御家流組香集』でも「別」となっていますので出典に従っておき、理由は後述しましょう。

さて、この組香の香種は4種、全体香数は18香、本香数は15包と大変大きな組香となっています。まず、「一」を4包、「二」を5包、「三」を6包、「別」は3包作ります。この累進的な香数は「後鶴亀香」などと同様で、祝組らしく「末広がり」とする演出ためかと思います。次に「一」「二」「三」のうち各1包を試香として焚き出します。

ここで『御家流組香集』の構造では「別」を4包用意して、これも1包を試香として焚き出します。この「客香が無い」という部分だけが出典の組香の構造と異なっています。こちらですと、試香がありますので、第四の香を「客」や「ウ」とせず、「別の香」と記載する理由がはっきりします。

こうして、手元に残った「一(3包)」、「二(4包)」、「三(5包)」に「別」の3包を使って、指定された形に「結び置き」します。結び置きとは、香包を指定のとおりに組合せ、それが交じり合わないように組ごとに紙縒りでまとめて置くことです。これについて、出典には、「初中後を付けて三包づつ一結として五結なり」とあり、これに続いて聞の名目との対応とともに「初一・中二・後一 相生」「初一・中二・後三 若緑」「初三・中三・後二 子日」「初二・中三・後三 下紅葉」「初別・中別・後別 十返」と書かれています。これにより本香の15包は、出典のとおり「一・二・一」「一・二・三」「三・三・二」「二・三・三」「別・別・別」の3包×5組に結び置きします。

本香は、この5組を組ごとに打ち交ぜて、1組ずつ結びを解いて「初・中・後」と順番を変えずに焚き出します。その際、3炉ごとに香筒か折居を添えて廻します。

連衆は、3炉ごとに試香に聞き合わせて、これと思う「聞の名目」の書かれた香札を1枚投票して回答します。回答に使用する香札について、出典では、「札紋 春曙、春朝、春霞、春雪、春水、春風、春月、春雨、春山、春暮」とあり、春の陽光の移ろいや気象が織り交ぜて「春色満載」の景色となっています。連衆は、この札紋を「名乗り(香席上の仮名)」として使用します。一方、答えとなる「札裏」については、出典に記述がないのですが、出典の前後の組香から察して「相生」「若緑」「子日」「下紅葉」「十返」と「聞の名目」の書かれた札を1人前5枚用意するものと推察します。この組香は「三」が5包、「聞の名目」も5種ありますので、1種4枚しかない「十種香札」は流用できません。現代では専用の香札を作成するのは難しいので、雅趣を損なってまで札打ちにこだわるよりは、札紋の趣向は取り入れつつ、名乗紙に聞の名目を5つ書き記す「後開き」方式でも構わないかと思います。

回答に使用する聞の名目は下記のとおりです。

香の出と聞の名目

香の出 聞の名目 解釈
一・二・一  相生(あいおい) 一つの根元から二つの幹が分かれ、一緒に生まれ育つこと。⇒相生の松【祝賀】
一・二・三 若緑(わかみどり) 松の新芽の鮮やかな緑色。⇒成長【春】
三・三・二 子日(ねのひ) 正月の最初の「子」にあたる日⇒初子の小松引き【新年】
二・三・三 下紅葉(したもみじ) 樹木の下に散り積もっている紅葉。【秋】
別・別・別 十返(とかえり) 十回繰り返すこと。松が十回花を咲かすのは千年⇒永遠・長寿【祝賀】

このように、主に「松」をイメージしたおめでたい言葉が配置されています。香の出を数並びで解釈すると「相生(一・二・一)」は、「一より出でて二つに分かれも最後は寄り添って一つ」と解釈できますし、「若緑(一・二・三)」は新芽らしく「末広がり」となっています。「子日(三・三・二)」と「下紅葉(二・三・三)」は「三」を「土」に見立てて「土の下(根)」「土の上(葉)」と捉えました。また、「下紅葉」は秋の季語ですが、松の根本の景色と考えれば、枯れ色の「敷松葉」も美しいかと思います。「十返(別・別・別)」は、『御家流組香集』のように「別」が地の香であれば、「松の花」が何度も咲く景色と月日を単に表したものと解釈できます。出典でも「別」の表すものは「松の花」だと思いますが、せっかくの「客香」を1組にまとめて出すという潔さも特筆すべき趣向であり、もっと観念的な景色を醸し出しすものなのかもしれません。

本香が焚き終わりましたら、執筆は札を開き、連衆の答えを香記の解答欄にすべて書き記します。連衆の名乗の欄は、札紋(仮名)を大きく、名前(本名)は右肩に小さく書き添えます。答えを書き終えたところで、香元に正解を請い、香元は香包を開いて1組目から順に香の出を読み上げます。執筆は、香の出の欄に要素名を右から3つ「三(後)・二(中)・一(初)」のように書き、5組を5段に書き記します。香の出が読み上げられた後、執筆は香の出から正解の名目を定め、同じ名目の右肩に複数の要素がまとめて当たったことを示す「長点」を掛けます。この組香の点法については、出典に「三*柱当りに一点、一、二*柱あたりに点なし」とあり、名目の当りのみが得点となり、名目の構成要素の一部が当たったことを得点とする「片当り」はありません。

この組香の下附について、出典には「皆は常磐、外は幾組と書く」とあり、全問正解は「常磐」、その他は当たった名目の数によって「○組」と書き付します。また、出典の「千年香之記」の記載例によれば、全問不正解には下附が無く、何も記載しないこととなっています。

最後に、勝負は最高得点者のうち上席の方の勝ちとなります。

お初会には、秘蔵の香木を出して「鑑賞香」に興ずることも多いかもしれませんが、前座ではふんだんに香木を聞くというのもお師匠さんの心意気かと思います。皆さまも是非「千年香」で社中の長寿と永遠を祈ってみてはいかがでしょうか。

 

宝くじを冷蔵庫に保管しておく方もいるそうですね。

お金は暗くて静かなところが好きで寂しくなると仲間を呼ぶんだそうです。

古代中国で、お金を壺の中に入れ地中に保管すると増えるとされてきたことに由来するようです。

千代かけて引きぞ煩う若緑野辺こそ春の住処なりけれ(921詠)

本年もよろしくお願いいたします。

組香の解釈は、香席の景色を見渡すための一助に過ぎません。

最も尊重されるものは、皆さん自身が自由に思い浮かべる「心の風景」です。

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