「自分で作ろう!」シリーズ No.

香畳の作り方

 

昔の香道具は探しても売っているものではありません。

無いものは・・・作るしかありませんね。

 香畳(こうたとう)は、香合(こうあわせ)の際に連衆が各自の所有する自慢の名香等を持ち寄るために考案された携帯型の香道具入れです。この中には、香包と銀葉、香が仕込まれており、香合の際には、そのまま香盆の上に並べて、表地の色柄や書き添えられた和歌等も含めて鑑賞の対象としていました。現在、市販されているものは無く、ここでは『五月雨日記』の記述を典拠に復刻しています。

 『五月雨日記』では、三種の香畳について、その表裏の意匠や和歌、彩色について詳しく記載されていますが、各自の好みや所持する香により千差万別となる筈ですので、これについては捨象しました。また、寸法については、一部記載の無いものもありましたので、推測で補うこともいたしました。なにぶん情報が少ないものですから、本当に「復刻」かどうかは、皆様のご判断に任せるとして、「こんなものもあった。」ということをご存知いただければ幸いです。

素材

 出典では、「表が絹地で裏が金」とされています。ただし、絹地は、折り返しや糊貼りなど、素人には扱いが面倒ですので、とりあえず、和紙2枚を表裏に貼り合わせて、表が柄物、裏が金の堅紙を作ることでいいでしょう。「平打ち」の技法は、裏表の紙を糊付けし、平面板に挟んで圧延をかけ、時間をかけて乾燥させるのですが、その際、中から外に空気を抜いていくなど、紙の表面に皺が残らないように注意しましょう。出来れば、表地の全ての辺を(纏るように)折り返して、その上から寸法に切った裏地を貼り付けるようにすると、切り口がバラバラにならず仕上がりも綺麗ですが、この工程は、表装と同じで熟練を要する仕事かもしれません。

採寸

 寸法は、『五月雨日記』にあるとおり、「竪三寸七分(11.21cm)、横二寸(6.06cm)」の仕上がりを念頭に、メートル法の定規でも作りやすいように端数を切り捨てて記載しました。

折り込み

 裏地の金は、上記の展開図通りに採寸して切っておきます。表地も、そのまま張り合わせて裁断する場合は、同様の寸法となります。

 表地について、最初に全ての辺を折り返して完成度を上げる場合は、その分の「糊しろ」を外周に加えて、一度折り返して糊付けし、乾燥した後の寸法が上記と同じなるにようにしてください。

※ 左端の折り返しの「20mm」と、台形の上底「40mm」と高さ「20mm」については、出典には「ヶ程(かほど)に」などと図示され、寸法の記載がないため、折り易く、使いやすい寸法で補筆しました。

 貼り合わせが出来た堅紙の@とAの部分を内側に下ります。

 Bも内側に折っておきます。

※ 内折りする場合は、あらかじめ千枚通し等で、折り目に溝をつけて置くと真っ直ぐに折ることが出来ます。また、折る際にも定規等を使って、均一に力が加わるようにすると、一直線の折り目が出来ます。

 左端の長方形を内側に折りたたみ、@とAの下にBを差し込みます。

 すると、左の長方形が上下に口の開いた「筒」のようになります。

 さらに、左側の長方形を内側に折りたたみ、今度は、できている筒の部分にCとDを差込みます。すると、筒の中で@、CとA、Dは向かい合わせに差し込まれている形になります。

 右側に残った長方形は、畳紙の「扉」となり、本の表紙のように開くことができます。

 左側の堅い筒の部分は、二層になった「入れ物」となります。

 

【香畳】(本体)

 右側の扉を畳むと、上下に口の開いた「紙入れ」のようなものが出来上がります。

 本体は、ここで一旦終了です。

 

次に香畳に仕込む道具の入れ物を作ります。

【香箸はさみ】

 左図の寸法で、作業1と同様に「平打ち」した堅紙を作り、箸が動かないように、内側に二筋の紙を張ります。

 二筋の紙の中に香端を据えて、下から上に挟み込むように折ります。

 香箸については、「長さ四寸二分(12.73mm)。銀にて作る。四角なり。」とあります。銀製となると自分では作れないため、材質は、竹や木でよろしいかと思います。

※ 香箸はさみの寸法は、出典には図示のみで記載されていませんので、扱いやすい寸法を推測で記載しました。

 

 

 

【銀はさみ】

 左図の寸法で、作業1と同様に「平打ち」した堅紙を作ります。

 使用する香包の数に見合った銀葉を中に入れ、下から上に挟み込むように折ります。

※ 香箸はさみの寸法は、出典には図示のみで記載されていませんので、扱いやすい寸法を推測で記載しました。

 

 香畳の上の口から「香箸はさみ」を差し入れ、下の口から「銀はさみ」を差し入れます。

 どちらも「爪がかかる程度」に、端をはみ出させて置きます。

 

 香畳の出来上がりです。

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 肝心の香包は、表の扉を開けたところ(香箸はさみ等を差し込んだ筒の奥)に隙間があるので、そこに差し入れます。

 香包の数は、出典では「二種或は三種」とあります。あまり入れすぎると、銀葉の数も増えるので、形が保てなくなりますので、ご注意ください。

香道具

 こうして出来た香畳は、正式には顔料で彩色した絵とそれに因んだ和歌を表裏に散らすようです。出典の「一番の香畳」には、「梅花たが袖ふれし匂ひとぞ春やむかしの月にとはばや」に因んで「梅花、袖、月雲」が描かれ、それらについて、何で彩色するかも細かく書かれています。日本がの出来る方は、興が乗ったら自作の彩色で作られるのもよろしかろうと思います。

 香畳は、現在の香席ではほとんど使用しませんので、「数寄者道具」として携帯し、「香所望」や「焚継香(たきつぎこう)」の際に利用すると香人としての株がグッと上がるでしょう。

 「香合」や「焚継香」は、香遊びの原点です。いつかは気の置けない雅友と、香盆に持ち寄りの香を並べて、やってみたいですね。

 

意外に簡単、意外に安価!!

これからは、香道具を探し回るより作ってしまいましょ。

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