月の組香

はなちるさと(一、三炉と二、四炉が同香、五炉は異香)

源氏物語の「花散里」が舞台となっている組香です。

登場人物の関係性を香の組合せで感じ取るところがポイントです。

 ※ このコラムではフォントがないため「」を「*柱」と表記しています。

説明

  1. 香木は3種用意します。

  2. 要素名は、「光源氏の君(げんじのきみ)」「麗景殿の女御(れいけいでんのにょうご)」と「女三の君(おんなさんのきみ)」です。

  3. 香名と木所は、景色のために書きましたので、季節や組香の趣旨に因んだものを自由に組んでください。

  4. 「光源氏の君」は3包、「麗景殿の女御」は2包、と「女三の君」は1包作ります。(計6包)

  5. このうち「光源氏の君」と「麗景殿の女御」の各1包を試香として焚き出します。(計2包)

  6. 手元に残った「光源氏の君」2包と「麗景殿の女御」1包に「女三の君」を1包を加えて打ち交ぜます。(計4包)

  7. 本香は「二*柱開」で4炉廻ります。(2包×2組)

※ 「二*柱開」とは、香札等を使用して「香炉が2炉廻る毎に1回答えを投票し、香記に記録する」やり方です。

  1. 香元は、香炉を順次焚き出します。

  2. 連衆は、2炉ごとに試香と聞き合わせて、名乗紙に要素名を2つ書き記します。

  3. 執筆は、各自の答えを全て書き写します。

  4. 執筆の転写が終わったところわ見計らって、香元は2炉ごとに正解を宣言します。

  5. 執筆は、正解を聞いて、各自の当たりに点を付します。

  6. 8〜12をもう1回繰り返します。

  7. 点数は、1組の要素が2つとも当った「両当たり」を1点とし、どちらか一方だけ当った「片当たり」は無点とします。(2点満点)

  8. 下附は、全問正解には「花散里」、1組当ったものに「橘の薫り」、2組とも外れたものに「五月雨」と付します。

  9. 勝負は、最高得点者のうち上席の方の勝ちとなります。

 

空気が湿り気を含んで、香聞きには絶好の季節となりました。

 今年は、「源氏物語千年紀」です。「紫式部日記」の第一部「敦成親王誕生記」の中の寛弘5年(1008)11月1日の記に、敦成親王の誕生50日の祝儀の席で、酔った左衛門督が「『あなかしこ、このわたりに若紫やさぶらふ』とうかがひたまふ」という記述があります。これは当時既に『源氏物語』が宮中で読まれていたことを示す記録の中では最初のものということです。そこで、寛弘5年(1008)を『源氏物語』が書史上に現れた「誕生年」と仮定して、平成20年(2008)を「誕生から1000年を迎える」という記念の年にしたのだそうです。
 源氏物語の主な舞台となった京都府・京都市や宇治市では、既に昨年からプレイベントを挙行しており、今年になってからは年間を通じて『源氏物語』に因んだイベントが開催され、11月1日の記念式典開催に向けて盛り上がっています。4月の「都をどり」も「光源氏テイスト」満載でしたので、葵まつりや祇園まつり、時代祭りも今年は一層華麗を極めることでしょう。北方の滋賀県大津市では、紫式部が新しい物語を祈願して籠もった石山寺観音堂がありますので「紫式部が源氏物語の着想を得た地」として、ルートバスを仕立てて「石山寺」のPRに力を入れています 。一方、石山寺の名月(寛弘元年八月十五夜)から発想された『今宵は十五夜なりけりとおぼしし出でて、殿上の御遊恋ひしく・・・(須磨:第二段)』でつながりもある、兵庫県神戸市や明石市は「源氏物語の山場は、やはり須磨・明石」としてセミナーや展覧会を開催するなど、ご当地合戦も華やかです。
 少し遠方になりますと、紫式部が父の藤原為時とともに都を離れて1年余りを過ごした越前市(武生)が「源氏物語の生まれたまち」として様々な観光誘致を繰り広げています。東国の方では、目黒雅叙園が、私の好きな人形師「辻村寿三郎」で織り成す『源氏物語×百段階段』展が開催されており、公式的な協賛イベントは、ここら辺りが北限かもしれません。遠くみちのくの田舎香人は、京都でのお香関連のイベント情報で「源氏物語千年紀」の存在を知るわけですが、4月に「光源氏香(九*柱)」でイントロダクションをつけ、先月から「勝手協賛」に踏み切ったというわけです。
 我が「香筵雅遊」では、「空蝉香(H11.8)」「若草香(H13.3)」「野々宮香(H13.11)」「鈴虫香(H14.9)」「箒木香(H16.5)」「梅枝香(H17.2)」「弥生香(H19.3)」「四節香(H19.6)」「光源氏香(H20.4)」を含めると過去9回、『源氏物語』から発想された組香の紹介をしてきました。
 今回は何をしようか?と決めかねていましたところ、ある日の朝方このような夢を見ました。−−−何処かのお宅での香席に連座している私に、ご亭主をされていた老婦人が「是非、逢わせたい人がいる」と言って、寄付まで手を引いて行かれます。長い廊下を伝って戻った部屋の襖を開けますと、その入り口付近に昔付き合いのあった女性が当時の劇団員(死んでしまった2人の友を含め)たちと着物姿で座っています。なんと彼女の姿はちゃんと「経年劣化」を遂げており、かなり「膨らんだ」感じでした。私は、懐かしさから直ぐに「○○ちゃん?・・・久しぶりぃ♪」と飛びつくように抱きつきます。(これも私の性格からすれば、ありえないフレンドリーさでした。)その後、いろいろと積もる話をしている最中に目が覚めるという、なんとも中途半端な夢だったのですが、まぁ、彼女との「再会」という満足感が勝って、心温まる目覚めでした。−−−
 この女性、生来「面倒見の良い性格」で、いつも人と合うごとに苦労を「買って出る」というか「背負い込む」(ヒモが付きやすい)性質だったため、とても行く末気にしていたものですから、夢の中で安心させてくれたのも、神仏の思し召しでしょう。
 そして、その思し召しを反芻している間に、今回は「花散里の帖をご紹介しよう」と自然に結論が出ました。「花散里」は、私が、源氏物語千年紀委員会サイトの「登場人物人気投票」 に1票を投じた女性で、和物雑貨の「光源氏シリーズ」のような製品が出た際も、真っ先に手にとってしまう「地味ぃ〜な魅力」がある女性です。

 今月は、永遠のセカンドワイフでしたが、プラトニックの中にも 「妻の職能」を全うした生き方がステキな女性のデビューシーン「花散里香」(はなちるさとこう)をご紹介いたしましょう。

 「花散里香」は、三條西尭山著の『源氏物語新組香(上)』に掲載のある大倉直介氏が創作された新しい組香です。同名の組香は『香道蘭之園(八巻)』にも見られますが、こちらは、香5種と客香をそれぞれ1つずつ結び置きした本香10香(二*柱開)の組香で、証歌の各句が聞きの名目として配置されているものです。
 当然、この2つの組香は同名異組ですので、今回は、香によって登場人物と物語の関連性が端的に現されるよう、能く練られている『源氏物語新組香(上)』を出典として筆を進めたいと思います。

 まず、この組香の証歌は「橘の香をなつかしみ郭公花散里をたづねてぞ訪ふ(出典のまま記載)」という歌です。これは、『源氏物語』第11帖「花散里」の中で、麗景殿の女御と昔語りをするしみじみした場面で光源氏が「橘の香を懐かしく思って、ほととぎすが花の散ったこのお邸にやって参りました」と詠じた歌です。この歌は、源氏物語の中で最も短い第11帖の物語のテーマとなり、そこに現れた光源氏のお相手の女性を「花散里」と言わしめることとなります。

ここで、この組香の舞台となる「花散里」のあらすじをご紹介しておきましょう。

『源氏物語』第11帖は、光源氏の25歳夏、近衛大将時代の物語です。

[第一段 花散里への訪問]
 故桐壺院が崩御して右大臣派が主導権を握る中、厭世感はありながら出家するわけにも行かない光源氏は、この心の煩わしさは、辛い想いを忍んでいる姫君がいることを思い出されて、五月雨の晴れ間に麗景殿の女御の妹、女三の君を訪問することを決意します。
[第二段 中川の女房との贈答歌→垣根のホトトギス]
 中川の辺りの小さな屋敷を通りかかった時、琴の調べやその風情を見て、光源氏は「一度、契った方の家だ。」と気づきますが、「ずいぶんと時が過ぎてしまったなあ、はっきりと覚えているかどうか?」と気が引けてためらっていたところに、ホトトギスが「訪問せよ」と促しているかのように鳴きます。そこで決心して惟光を使い「昔にたちかえって懐かしく思わずにはいられません、ほととぎすがわずかに契りを交わした同じ家の垣根で鳴くので」と歌を遣わしましたが「ほととぎすの声は、昔のままだと分かりますが、貴方の心が五月雨の空のようにはっきりしないので、どのようなご用か分かりません」と返されて、 「そこまで知らぬ素振りをされるならしょうがない」と引き下がりました。
[第三段 麗景殿の女御との昔語り→橘のホトトギス]
 目的地の麗景殿の女御の邸内は、想像以上に人影もなくひっそりとしており、まずは麗景殿の女御と橘の花の薫る中、故桐壺院のことなどしみじみ昔語りをしている間に夜もふけてきました。そんな時に、またホトトギスが同じ声で鳴きます。「後をつけてきたのかな?どうして知っているのだろう?」と思い、「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里を訪ねてぞとふ」と詠じました。それに対して麗景殿の女御が「訪れる人もなく荒れてしまった住まいには軒端の橘の花だけがお誘いする縁(よすが)になったのでした」と返すのも奥ゆかしい風情で感心します。
[第四段 花散里との再会]
 その後、寝殿の西側の部屋を、わざわざ訪ねて来たようにではなく、なにげない様子で覗きましたところ、珍しい訪問なのに加えて、誠に比類ないほど美しい光源氏の君の姿を見て、長くお通いの絶えていた辛さもすっかり忘れて情愛を交わします。
 そして、「心変わりは世の常」というけれど、垣根のホトトギスを詠った「中川の君」も心変わりしたのでしょうね。・・・というオチが付いています。

 次に、この組香の要素名は、「光源氏の君」「麗景殿の女御」と「女三の君」となっています。

 このように、この組香の要素名は「花散里」の物語のうち、(中川の女房たちと惟光を除いた)主要な登場人物が配されており、お香によってこれらの人物を関連付け、物語の場面を思い浮かばせるという趣向になっていると思います。

 続いて、この組香の香種は3種で香組の際には、登場人物の人物像によって香気を選ぶべきかと思います。出典では、「時鳥(伽羅:六十種名香)」「中川(真南蛮:六十一種名香)」「五月雨(新伽羅:百二十六種名香)」が配置されており、往時の「香道サロン」の栄華を物語っているゴージャスな香組が記されています。そのまま引用して、往時を偲ぶことも可能でしたが、それぞれの香名があまりに物語に嵌りすぎていて「お約束」的な印象を受け、かつ「五月雨」のように下附と香銘が重複している部分もあるため、今回は木所だけを踏襲することとして、私なりの小記録の風景を描いてみました。

 この組香の香数は、「光源氏の君(3包)」「麗景殿女御(2包)」と「女三の君(1包)」を用意し、試香として「光源氏の君」と「麗景殿の女御」の各1包を焚き出します。光源氏にとっては、「麗景殿の女御」「女三の君」の2人とも「既知」の存在ではありますが、この物語の時点では、「麗景殿の女御」の方が、久しく会っていなくとも見咎められることもない親しい知人であるため、舞台背景にはまず「光源氏の君」と「麗景殿の女御」の関連性を用いて、連衆に第三段の昔語りの場面を想像させることを狙ったのではないかと思います。さらに、この2つの香気によってカルタの序歌のように「たちばなのぅ〜」と証歌を詠い上げる演出も含んでいるのではないかとの推論も成り立ちます。一方、「女三の君」は[花散里]で脚光を浴びるべき主役ですので、光源氏が「わざとなく忍びやかにうち振る舞ひたまひて、覗きたまへる」まで、あくまで「客香」として「寝殿の西の部屋」に隠れ、本香で「偶然」出逢うことによって熱烈な再会を遂げることを演出したのではないでしょうか?
 また、本香数は4包となりますが、光源氏は結果的に2包焚かれ、「麗景殿の女御(1包)」と「女三の君(1包)」にそれぞれ1:1で対応するようになっています。思うに、この組香は、基本的には第三段と第四段を舞台として組まれたものではないかと思われます。香の出によって、「光源氏と麗景殿の女御」」であれば第三段での語らいを、「光源氏と女三の君」であれば第四段での語らい+αの情景を連衆に連想させる趣向ではないでしょうか?

 さて、この組香の構造には、「二*柱開」という特徴があります。「二*柱開」は、一般的には要素名を「聞の名目」を導き出す素材として捉え、2つの要素の組合せから1つの景色(名目)を結ぶ際に使われています。しかし、この組香では、聞の名目は用意されておらず、「要素名2つを2度に分けて回答する」という方式を取っています。一見、中途半端に見えるこの構造は、実は男女の関係を表す妙味のある趣向と 考えられます。例えば、絶頂期の「光源氏と葵上」や「光源氏と紫上」のように、本当に仲睦まじい関係であれば「連理形式」(2つの香木を重ねて焚く)で表すのが最も端的でしょう。また、絶頂期の光源氏に情を通じた「空蝉」「夕顔」「末摘花」「朧月夜」「六條御息所」ならば「焚合形式」(2つの香木を1枚の銀葉に載せて焚く)のが、「艶の極み」かと思います。しかし、この組香に登場する「麗景殿の女御」はじめ「女三の君」は、精神的には通じている存在でも彼女らよりも肉体的には遥かに遠くに位置しています。そこで光源氏も「流石に忘れも果てたまはず」訪問したわけです。この関係性を端的に表すことが出来るのが「二*柱開」2つの香木を別々に焚くが1組と考えるという形式だったのではなかったのでしょうか?
 前述のとおり、この組香は明らかに「光源氏の君と麗景殿の女御」」の場面と「光源氏の君と女三の君」の場面を3種4包の組香で表そうとしています。4香打ち交ぜて、任意に組み合わせれば「光源氏の君・光源氏の君」「麗景殿の女御・女三の君」という香の出も想定されますが、無為に打ち交ぜて 、このような香の出となった場合は、「光源氏の君・光源氏の君」は光源氏の内省の問題だから第一段を表し、「麗景殿の女御・女三の君」は光源氏の現れる前(中川の君にうつつを抜かしている時間帯)だから第二段を現すと解釈してもよいでしょう。
 できれば、香元は、「光源氏の君・光源氏の君」「麗景殿の女御・女三の君」という寂しい風景にならないように工夫することが必要かと思います。あらかじめ「結び置き」の手法を取り入れて「光源氏と二人の女性は必ず合う」こととすればよろしいかと思いますが、香気の景色がたった2通りに狭まってしまいますので、作品としては評価が落ちてしまいます。景色は前広に4つ用意しておいて、「香席では意趣に叶った景色が出る。」というのが、香元の手捌きの妙かもしれません。(^_^)v

 本香は、「二*柱開」で焚き出されますので、基本的には、回答は2度に別けられ、その都度正解が宣言され、当たりが記録される仕組みです。出典では「聞くには手記録紙を使用する」と記載がありますので、連衆は名乗紙(手記録紙)を2枚ずつ取って、2炉ごとに1枚ずつ回答を記載して提出することになります。この組香は聞の名目がないため、考えようによっては、「段組」のある組香のように、1枚の名乗紙に2炉ごとに「A段」「B段」と分けて4つの要素名を書いても同じようにも思えますが、1組終わるごとに正解を宣言するやり方によって、物語の場面転換を時間的にも大きく取ることができるのだと思います。是非、名乗紙の節約など考えずに「二*柱開」で行い、作者の意趣を感じていただければと思います。

 出典では、記録についての記載がありませんので、「常のごとく」と解釈しています。各自の答えは、回答が廻される毎に全て書き写しますが、この組香は要素名が長く画数も多いため、「源氏の君」は、「源氏」。「麗景殿の女御」は、「麗景殿」または「女御」。「女三の君」は、「女三」または「三の君」などと省略して、執筆の手間を省くとともに、香記の景色を作るとよいでしょう。次に、香元の宣言を待って正解に 合点を掛けますが、この際は、各要素ごとに点を付しておいた方がよろしいかと思います。「二*柱開」の組香の中には、「香元の宣言後に当った答えのみ書き写し、点は付さず、外れは白闕(はっけつ:空白)にする」というものもありますが、この方式では、本香数が少ないため香記が寂しくなる場合があります。

 この組香では、点数についての記載はありませんが、下附の記述から、1組を構成する二つの要素名が両方当らなければ点とならないように見えます。つまり、香の出が「光源氏の君・麗景殿の女御」と出た場合は、「光源氏の君・麗景殿の女御」と回答したもののみ当たりとし、「麗景殿の女御・光源氏の君」は順序が入れ違っているので不正解。また「光源氏の君・女三の君」「光源氏の君・光源氏の君」のように一番目の「光源氏の君」が当っていても「片当たり」は外れと同様に扱われます。これによって、導き出される点数は、「2点」「1点」「0点」の3通りであり、これを出典ではそれぞれ「花散里(2点)」「橘の薫り(1点)」「五月雨(0点)」と下附で表すこととしています。
 全問正解(2点)の「花散里」は、この組香のテーマですから異論のないところでしょう。要素名として「女三の君」として扱われてきた姫君も、ここで晴れて「花散里の君」となるわけです。2組のうちどちらか1組だけ当った場合(1点)は、「橘の薫り」と下附されます。これは証歌からの引用に他なりませんが、「橘の薫り」を頼りに、自分を「時鳥」に喩えてやってきた光源氏と会うことができたという意味かと思います。2組のうちどちらも当らなかった場合(0点)は「五月雨」と下附します。これは、「星合香」の「大雨」や「七夕香」の「雨夜」と同様、2人が合うことの阻害要因としての「雨」を表します。そもそも、五月雨が晴れなかったら、「思ひ出でたまふには、忍びがたくて」と光源氏の足が向かなかったかも知れません。

 最後に勝負は、最高得点者のうち上席の方の勝ちとなり、例えば「花散里」が複数いる場合は、座中の上席の方が香記を受け取ることとなります。一方、「花散里」が無く、「橘の薫り」の勝負となる際のことですが、そのまま上席を優先とする方法と本来捨象されていた要素名の当たりまで勘案して、当たり数の多い方を勝ちとする方法もとることが出来ます。そのために前段の記録法に「要素ごとに点を付すべし」と書いてみました。そうすれば要素名として「2つしか当らない上席よりも、3つ当てている末席の方が優位」というルールもつくることが可能です。いずれ、このような勝負の判定は、「衆議か正客の判断」となりますので、選択の可能性の残る記録法を採用しました。

 『源氏物語新組香(上)』に掲載のある組香は、香種、香数が多く、構造も複雑なものが多いのですが、「花散里香」は、以前ご紹介した「葵香」(山本霞月作)と同様、比較的催行しやすい組香ですので、「源氏物語千年紀」に因んで、皆様で楽しんでみてはいかがでしょうか?


「花散里」の魅力は何か?というと・・・第一は「名前の語感」でしょう。

でも、こんなステキな名前を与えられた由縁は

名前負けしない知性と教養と性格を備えた女性だったからだと思います。

紫式部は、容姿に恵まれなくとも実力でシアワセを勝ち取る平安女性も描きたかったんでしょうね。

 

組香の解釈は、香席の景色を見渡すための一助に過ぎません。

最も尊重されるものは、皆さん自身が自由に思い浮かべる「心の風景」です。

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