八月の組香

「瀟湘八景」や「近江八景」をモチーフにした組香です。

同じ当り数でも大きな得点差が出るところが特徴です。

※ このコラムではフォントがないため「ちゅう:火へんに柱と書く字」を「*柱」と表記しています。

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説明

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  1. 香木は、4種用意します。

  2. 要素名は、「春」「夏」「秋」「冬」です。

  3. 香名と木所は、景色のために書きましたので、季節や組香の趣旨に因んだものを自由に組んでください。

  4. 「春」「夏」「秋」「冬」は各5包作ります。(計 20包)

  5. 本香は、あらかじめ「春・春」「夏・夏」「秋・秋」「冬・冬」「春・夏」「夏・秋」「秋・冬」「冬・春」と2包ずつ8組に結び置きします。

  6. 「春」「夏」「秋」「冬」各1包を試香として焚き出します。(計 4包)

  7. 先ほど結び置いた8組を打ち交ぜます。(計16包)

  8. 本香は、「二*柱開(にちゅうびらき)」で 16炉廻ります。

※ 「二*柱開」とは、2炉ごとに正解を宣言し、答えの当否を決めるやり方です。

−以降9番から13番までを8回繰り返します。−

  1. 香元は、2炉ごとに、香炉に続いて「札筒(ふだづつ)」または「折居(おりすえ)」を廻します。

  2. 連衆は2炉ごとに試香に聞き合わせて、聞の名目の書かれた「香札(こうふだ)」を1枚投票します。

  3. 執筆は香記に連衆の答えを全て書き写します。

  4. 香元が正解を宣言します。

  5. 執筆は、2つの要素名から正解の名目を定めて当たった答えの右肩に「点」外れた答えの左肩に「星」を掛けます。

  6. 得点は、聞の名目ごとに独聞は8点、2人以上の当たりは2点、その他は 名目の当りにつき1点とします。

  7. 一方、減点は独りだけ間違えた場合は−8点、2人以上の当たりは−2点、その他の外れは−1点とします。

  8. 下附は、各自の得失点を「○点」「○星」と2列に並べて書き記します。

  9. 全問正解の場合は、得点に加えて「八景」と書き記します。

  10. 勝負は、最高得点者のうち上席の方の勝ちとなります。

 

 水辺から上がる花火の光彩は水面に反射して二倍の楽しみがあります。

夏の夜空を彩る花火のシーズンもピークを迎えました。花火に関する私の原体験は、宮城県の「白石夏まつり」の花火で した。親に手を引かれながら白石川の堤防を会場に向かった時の夏夜の匂いは、昼間の草いきれとは明らかに異なり、しっとりと艶を孕んだ香りでした。会場には、頭上に舞飛ぶ星の鮮烈な色光と 星が消えた後で漆黒の空に残る煙の軌跡の綾、そして、打上花火の発する独特の硝煙の香りがありました。この頃は、安全基準が厳しくなったのか、この香りは花火の見えにくい風下に立たなければなかなか感じることができ なくなりました。長じて、何事にも一歩引いて臨場感を避けるような「ヒネタ大人」になってからは、花火を遠くから見るようになりましたが、遠くの空に「生け花」のような花火が夜を染めて、音が遅れて飛んでくる風景にも癒しを覚えていたものです。今では、観光モードに変わりましたので人混みに臆せず最前列に突入し、直下で「導付き八重芯変化菊…」とか心の中で呟きながら、一級薀蓄士ならではの新しい楽しみ方を発見しています。とりあえず「音がすれば見に行かないと気が済まない」 、そんな「刹那美至上主義」は、払拭し得ない我が習性だと思っています。

みちのくの地では、七夕も旧盆なので花火大会も8月に開催されるものが多く、1日の「石巻川開き祭」に始まり、5日「仙台七夕花火祭」でピークを迎え、故郷のお盆花火を見て廻るうちに、月末の「大曲の花火」で締めくく られるというのが、私の中の 「花火カレンダー」でした。特に地元の「仙台七夕花火祭」については思い入れが強く、自宅マンション購入の際もじっくりと辺りの建物を見回り、お仕事のノウハウを駆使して、地形図と建物の高さをプロットして「見通し図」を作り、「良し!ここならベランダから花火が見える!」と契約書に太鼓判を 押したものです。もちろん、広瀬川河岸段丘の南斜面、旧武家屋敷街の持つ「土地の性能」にも惚れ込んで「ここに何が建ってもここに住む」という気概は当初からあったのですが、一面、「花火が居ながらにして見えるから買った」と言われても否定できない程、花火に執着していた ことは間違いありません。住んでから6年間、風向きの加減で硝煙に巻かれ、ネット中継をベランダで見たこともありましたが、まずまずの戦績で快適な花火見物ができたと言っていいでしょう。

昨年は、尾張の地に来てまだ間がない頃、突如、千種庵に聞こえて来た重低音で「名古屋みなと祭花火大会」が開催されていることを知らされました。どうも東海地方は7月中頃からシーズンとなるようで、花火好きの私としては、寝耳に水で若干ジタバタしたのですが、それからスケジュールを調べ始めて「夏の夜遊び計画」を立てにかかりました。ところが、 豊かな土地柄のせいか花火大会があまりにたくさん有り過ぎて迷ってしまい、結局、「安近短」と「打上発数」のポートフォリオから「濃尾大花火」に観客デビューしたというわけです。木曽川 の花火は、お盆情緒のある「まきわら船」が提灯に火を灯して行き交う中、「割り物」の単発花火が切れ目なく「ドーン」「ドーン」と上がり、時折「2尺玉」が更に華麗な花を添えるという趣向で した。仙台ですと「芳賀煙火工業」が上げるドラマ性のある創作花火やスターマインを見慣れていたため、「単発鑑賞型」は若干単調にも思われましたが、癒し効果は抜群で「盆の供養」として一発一発、思いを込めて大切に打ち上げられているようにも思えました。

今年 は、既に名古屋港で花火大会デビューを済ませ「結婚してくれぇ!」「結婚おめでとう!」と御祝い事で8号玉や10号玉を上げる「メッセージ花火」があることを知りました。新盆に上げる鎮魂の花火と「思い」は異なるものの「刹那に万感を込める」という 美意識は継承されているのだなぁと思いました。夏は祭りが目白押しなのは当たり前、メインを「全国選抜長良川中日花火大会」に照準をあわせて「夏の夜遊び計画」を策定中ですが、 翌日には愛知県で最大規模を誇る「豊田おいでんまつり」があり、「豊橋祇園祭」の手筒花火も捨てがたく、また、花火ばかり見ていると「郡上おどり」のような情緒のある夏祭りを見逃すこともあり ・・・いろいろとスケジュール&体調管理が難しい2年目の夏となりました。まぁ、「クウネルアソブ」は我が座右の銘ですので頑張ります。いやはや、シアワセですねぇ。

今月は、水辺にまつわる四季の景観を組香に写した「八景香」(はっけいこう)をご紹介いたしましょう。

「八景香」は、聞香秘録の『拾遺聞香撰(下)』に掲載のある組香です。 この本は、「闘鶏香」や「吉野香」等の盤物も掲載されていますが、跋文に志野流宗匠が記述した組香書を写したことが書かれていますので、金鈴斎が諸家の組香を集成した 『聞香秘録』(全20冊)のうち、米川流発生後の「志野流の聞書(ききしょ)」であることが明白な伝書であるといえましょう。同名の組香は 、早稲田大学所蔵の『外組八十七組(第七)』にも掲載があり、その内容はほとんど同じです。組香の分類的には、景色の中に四季の流れを明らかに意識しているため「四季の組」としたいところですが、「春」「夏」「秋」「冬」など特定の季節を表す組香でなければ「恋」と「雑」しか選択の余地はない分類では、「雑組」ということになろうかと思います。今回は、両書ともに同様の記載ですので、「元禄十五牛年霜月 古閑廉 宝暦二年申六月 金鈴斎之写」と来歴のはっきりしている『拾遺聞香撰(下)』を出典として書き進めたいと思います。

まず、この組香に証歌はありませんが、「八景香」という題号からつの景色を結ぶ組香であることは誰でも察しが付 く思います。「八景」とは、中国の北宋時代に湖南省の洞庭湖(どうていこ)と湘江(しょうこう)から支流の瀟水(しょうすい)にかけて見られる典型的な湖水の情景を集めて描いた「瀟湘八景図(しょうしょうはっけいず)」から発想して、韓国、台湾、日本等に も波及した風景評価です。名数としては「日本三景」の「三景」をはじめ「四景」「十二景」等もありますが、「八景」は日本各地に 最も多く見られ、最もポピュラーな景勝表現と言っていいでしょう。また、小記録には「聞の名目」が書かれていますので、8つの言葉から即座に「瀟湘八景」や「近江八景(おうみはっけい)」を連想できる方もいらっしゃる かと思います。

次に、この組香の要素名は「春」「夏」「秋」「冬」となっています。香数については、それぞれ5包の同数ですし、全て試香がありますので、要素ごとに取扱いの軽重はありません。これら四季の香を素材として組合せ、季節ごとの景色を結ぶというのが、この組香の趣向となっています。

この組香の香種は4種、香数は全体香数が20香、本香数が16 包と大変規模の大きな組香となります。 (本香盤の菊座が足りませんので、香包の上に銀葉を置くケースとなりましょうか。)構造は、まず「春」「夏」「秋」「冬」を各5包作ります。ここで出典では「右本香、十六包を二包づつ始めより結合わせ置く。左の通り。」とあり、あらかじめ各要素を下記のとおり「結び置き」することが指定されています。

「春・春」「夏・夏」「秋・秋」「冬・冬」 「春・夏」「夏・秋」「秋・冬」「冬・春」

このように2包ずつ、同香の組合せ4組、異香の組合せ4組の計8組に結び置きするところが、この組香の第1の特徴となっています。 これらの組合せについては、同香で四季そのものを表し、異香で季節の変わり目や移ろいを表しているのではないかと思います。

さて、結び置きして残った各要素1包ずつを試香として焚き出します。試香が焚き終わりましたら、先ほど結び置きしていた8組を手に取って打ち交ぜます。出典では「壱組を二度に焚く。」としか書いてありませんが、本香は、最初の1組を手にとって、結びを解き「打ち交ぜ 」せずに香包の上の方から、そのまま焚き出します。もし、打ち交ぜしたとしても8組のうち4組は同香の組合せですし、異香の4組も交ぜることによって聞の名目を選ぶのに判別の付かなくなるものはありませんが、「八景香之記」の香の出の欄 に「春・夏」「夏・秋」「秋・冬」「冬・春」と順番を変えずに記載されていることや「季節の移ろい」を表現した要素の組合せが「春・冬」のように逆転するのは趣旨に合わないので、そのまま焚き出すのが順当かと思います。こうして、2包ずつ結びを解いては、上から順に焚くことを8回、都合16包を焚き出します。

ここで、連衆は、1炉ごとに焚かれた要素を試香と聞き合わせ、2 炉ごとに1組として聞の名目と見合わせて回答します。回答について、出典では「札打ちよふ(様)左の通り。」「○○の札打つべし。」とありますので、元々は組ごとに聞の名目が書かれた「香札」を用いて回答した「二*柱開」の組香であることがわかります。この場合、香元は2炉ごとに札筒か折居を廻し、連衆は組ごとに聞の名目の書かれた札を1枚投票し、執筆はこれを開いて香記に 答えを書き写し、香元が正解を宣言した後に、当たりに点を付します。本香は、これを8回繰り返します。

現代では専用の「八景香札」を作ることは贅沢極まりないことですので、「札打ち二*柱開」で行う際は、十種札の「一」「二」「三」「客」と「一(花)」「二(花)」「三(花)」「客(花)」等、8種 の札を適宜流用して聞の名目と読み替える形となるかと思います。私としては、札を読み替えると景色の主体ともいえる「聞の名目」の存在感が 、出香から香記に書き記されるまでの間、一時失われることとなりますので、それよりは現代風に「名乗紙」による「後開き」として、本香が焚き終わってから聞の名目を4つ書き記す方が、雅趣を損なわないかと思います。

「札表」として列挙されている「聞の名目」は下記の通りです。

香の出と聞の名目

香の出 聞の名目 景色の解釈
春・春 帰帆(きはん) 夕暮れ時に帆掛け舟が港に戻ってくる景色
夏・夏 夜雨(やう) 夜中に物寂しく降る雨の景色
秋・秋 秋月(しゅうげつ) 冴え渡る秋の月と、湖面に反射する月の景色
冬・冬 晴嵐(せいらん) 霞に煙る山と湖面の凪の景色
春・夏 晩鐘(ばんしょう) 沈む夕日と山中の寺院からする鐘の音の景色
夏・秋 夕照(せきしょう) 夕日を反射した湖面と夕焼けに染まる辺りの景色
秋・冬 落雁(らくがん) 雁が鍵型になって舞い降りる景色
冬・春 暮雪(ぼせつ) 夕暮から夜に掛けて降る雪の景色

日本に存在する「八景」の多くは、「場所(2字)」と「景色(2字)」の4文字で「どこどこのなになに」と列挙する形式をとっていますが、ご覧のように聞の名目に用いられている言葉は、「瀟湘八景」と「近江八景」に共通した「景色」の部分 の2字で配置されています。

元祖である「瀟湘八景」は、「瀟湘夜雨 (しょうしょうやう)、平沙落雁 (へいさらくがん)、烟寺晩鐘 (えんじばんしょう)、山市晴嵐 (さんしせいらん)、江天暮雪 (こうてんぼせつ)、漁村夕照 (ぎょそんせきしょう)、洞庭秋月 (どうていしゅうげつ)、遠浦帰帆 (おんぽきはん)」というものですが、「場所」の要素がぼんやりとして今ひとつピンと来ないので、イメージをより深く結ぶために身近な「近江八景」を巡ってみましょう。

近江八景」は、現在の滋賀県、琵琶湖の南部にみられる優れた風景から8つの名所を選んだもので、日本で最も早くに選定された「八景」だと言われています。

石山秋月 (いしやまのしゅうげつ)

琵琶湖の南端から流れ出る瀬田川沿いを少し下ったところにある石山寺(いしやまでら:大津市石山寺)は、近江八景では南の端にあたり、『源氏物語』の作者である紫式部が参篭の折に物語の着想を得たという伝承で有名です。

瀬田(勢多)夕照 (せたのせきしょう)

石山寺から瀬田川沿いを少し北上したところにある瀬田の唐橋(せたのからはし:大津市瀬田)は、瀬田川にかかる古橋で、山崎橋(京都府淀川)、宇治橋(京都府宇治川)とならんで日本三古橋といわれています。

粟津晴嵐(あわづのせいらん)

瀬田唐橋から北西方向に旧東海道を上ったところに粟津原(あわづはら:大津市晴嵐)という松原がありました。朝日将軍「木曾 義仲(きそよしなか)」が頼朝派遣の東国諸将に滅ぼされた「粟津の戦い」の地で有名な地でもあります。

矢橋帰帆(やばせのきはん)

粟津原の対岸、琵琶湖の南端近くの東岸にある矢橋(やばせ:草津市矢橋町)は、ここから船に乗ると東海道の近道になることから渡し船で栄えた港町でした。

三井晩鐘(みいのばんしょう)

粟津原を北上して大津港を西に入ってところにある三井寺(みいでら:大津市園城寺町)は、正式には、天台寺門宗総本山「長等山園城寺(おんじょうじ)」と言います。境内にある「梵鐘」は慶長年(1602)の鋳造で、平等院鐘(宇治)、神護寺鐘(京都)と共に日本三名鐘に数えられています。

また、六十一種名香の「園城寺」も出所が銘々の由来となっている「東大寺」「法隆寺」と同様、この寺から流布したものと思われます。三条家の家系図には、覚実(園城寺 法務大僧正)をはじめ、実豪、実弁、実讃等、たくさんの「法印」「大僧正」が掲載されていますので、お香の名門と園城寺が密接な関係にあったことは間違いありません。

唐崎夜雨(からさきのやう)

三井寺を北上した西の湖畔にある唐崎神社(からさきじんじゃ:大津市唐崎)は、境内が滋賀県指定史跡になっており、歌川広重が書いた「唐崎の松」があります。

堅田落雁 (かたたのらくがん)

唐崎神社を更に北上した南湖西岸にある浮御堂(うきみどう:大津市堅田)は、海門山「満月寺」の境内から湖上に突き出た仏堂で、今でも絶景ポイントとされています。

比良暮雪(ひらのぼせつ)

琵琶湖西岸の内陸一帯に連なる比良山地(ひらさんち)は、日本海側気候の影響を強く受け、冬季には多量の積雪があるため、冬には近江八景の背景とも言える雄大な雪景色が見られます。

「近江八景」の発生については、公卿が歌に詠んだことに発するとされていますが、時期は室町後期から江戸後期まで諸説あり、確定は難しいようです。しかし、出典の原典が残された元禄15年(1702)には少なくともこの組香があったわけですから、作者は、「瀟湘八景」から発想して「八景香」を編み出した可能性が高いのではないかと考えられます。ただし、現在では歌川広重の功績もあって「近江八景」の方が日本人の心にイメージしやすくなっていますから、「瀟湘八景」と「近江八景」に共する景色を等しく味わうことも大切かと思います。

本香が焚き終わり、最後の香札が戻って参りましたら、例のごとく記録し、正解を宣言し、合点を掛けます。点法について、出典では「一人嗅八点、二人嗅二点、三人以上一点之。」「不当は星を付く。是も一人八星、二人二星、三人以上一星なり。」とあり、すべての答えについて当否を論じ、得点である「点」と失点である「星」を付けることとなっています。また、連衆のうち 、ただ一人当たった「独聞」に8点、ただ一人間違えた「独不聞」に8星というように大きな得失点が設けられているところが、この組香の第二の特徴といえましょう。

「二*柱開」では、「点」「星」の記録までを席中に行い 、「後開き」の場合は、本香が焚き終わってから連衆の答えを書き写し、正解の宣言後に「点・星」を打ちます。「八景香之記」の記載例を見ると「点」は、当たった名目の右肩に「ヽ」と掛け、2点の場合は右斜め上に書き足していきます。一方、「星」は左肩に「・」と掛け、2点の場合は左斜め上に書き足していきます。また、「8点」「8星」は、名目の両側に4つずつ、「\ /」の字になるように書き記します。当りの8点は名目の頭文字が「振り分け髪を結っている」ように見えますし、外れの8星は 「カタツムリが角を出している」ように見えます。

そうして、最終組の「点・星」を付け終わりましたら、執筆は採点と下附の記録にかかります。ここからについては出典には何も書いてありませんが、「八景香之記」の記載例を見ると各自の得点と失点をそれぞれ合計し「○点」「○星」と二列に並記して下附するようです。また、全問正解は得点の他に「八景」と付記することとなっており「○点八景」と一列に記載されています。この組香の最高得点はすべてを独聞した場合の「六十四点八景」ですが、すべてが三人以上当っている場合は「八点八景」もあります。他の正解者との兼ね合いにより 、同じ当たり数でも得点が各自異なるのは、この組香の全てについて言えることですが、同じ全問正解の「八景」で大きく得点が異なること は、この組香の最大の特徴といえましょう。

最後に勝負は、各自の得失点の差分を取り、「得点」の多い方のうち、上席の方の勝ちとなります。万が一 、全員がマイナスの場合は「失点」の少ない方のうち、上席の方の勝ちということになります。

近江八景は、琵琶湖の南部に集中していることや、現在その面影すら偲ぶことができない場所もあるため、琵琶湖全体に広がる、その雄大さと変化に富んだ風景を広く紹介するため、昭和25年に「琵琶湖八景」が選ばれています。こちらを使うと「暁霧」「涼風」「煙雨」「夕陽」「新雪」「深緑」「月明」「春色」となり、現代人にもイメージしやすい「新八景香」もできそうです。

皆様も暑さのみぎり、「八景香」で水辺の四季を味わってみてはいかがでしょうか?
 

 

YouTubeのおかげで全国の花火を居ながらにして楽しめるようになりました。

癒しを求めるならこれで十分ですが、硝煙の匂いと腹に響く音がライブならではですね。

長良川錦紗の綾に色めきて月に掉さす鵜飼舟かな(921詠)

組香の解釈は、香席の景色を見渡すための一助に過ぎません。

最も尊重されるものは、皆さん自身が自由に思い浮かべる「心の風景」です。

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